のんのんびよりの4話は凄かったね

アニメブログやインターネット掲示板の類をまったくといっていいほど見ないので「のんのんびより」4話がどのような評価を受けてるのかまったく知らないのだけれど、個人的には久々のクリーンヒットだった。ここでは主にBパートの例の止め絵長回し演出につい…

世間では吾妻ひでおを所謂「オタクカルチャー」、または「萌え」の始祖とする向きがあるようだが、どうだろう。吾妻ひでおが「萌え」に与えた影響は認めるにやぶさかでないにしても、吾妻ひでおを萌えの「始祖」とまでするにはよほど慎重にならないといけな…

レンズ的リアリズムと目玉的リアリズム

「リアリズム作画」と言っても一言でそう簡単に割り切れるわけではない訳で。この作画はリアルだ、もしくはリアルっぽい、と言ったときに、その「リアル」もしくは「リアルっぽい」とは具体的にどういうことなのか、ということをキチンと掘り下げて問われる…

江藤淳(3)

ついこの間、近所を歩いていたら景観にふとした違和感を覚えた。そのとき私は交差点で信号待ちをしていたのだが、横断歩道の向こう側に何となく眼をやったとき、これは「何処か」が違うと直感的に思った。違和感の正体はすぐに気づいた。交差点の対角線上に…

江藤淳(2)

西田幾多郎を読んでいると時々意表をつくような文章に出会えることがある。例えば次のような文章。(太字引用者) 『哲学研究』第百二十七号に掲載さられた左右田博士の論文を読み、私は近頃初めて理解あり権威ある批評を得たかに思う。今間を得て、私の考え…

江藤淳(1)

1999年。この年、児童ポルノ法の制定と江藤淳の自裁という二つの出来事とともに20世紀は幕を閉じた。それは、とりもなおさず同時に批評の歴史の終わりをも意味していた、というのが私がここで提示したい仮説である。 児童ポルノ法の制定と江藤淳の自裁…

スクリーンの向こう側にあるのが大きな物語であろうとデータベースであろうとぶっちゃけ自分にはどっちでもいいし、どうでもいい。スクリーンの向こう側に物語を志向する人間もデータベースを志向する人間もスクリーン自体は見ていない。自分がアニメを見る…

スクリーンの手前で立ち止まること

野田努が初音ミクの製作者佐々木渉との対談においてこんな発言をしていた。 野田:ブラック・ドッグですかぁ。それは面白いですね。当時のテクノはロックのスター主義へのアンチテーゼというのがすごくあって、自分の正体を明かさないっていう匿名性のコンセ…

ロックから渋谷系へ――「けいおん!」から「たまこまーけっと」へ――

というタイトルだけ思い付いて後は特に何も考えてないんだけど、まあ「けいおん!」と「たまこまーけっと」のOPを聴き比べるだけでもロックから渋谷系への移行が行われているというのは誰の目にも明らかなわけだけれども。トポス論的に見ても「けいおん!」…

雑感

それにしても、と僕は思う。 日本には、アニメに関する批評が存在しない。批評家が存在しないだけでなく、批評の場そのものが存在しない。 (「庵野秀明はいかにして八十年代日本アニメを終わらせたか」東浩紀) 東浩紀が上のように記したのは1996年で、…

『たまこまーけっと』より『ビビッドレッド・オペレーション』のほうが優れている理由

ランドセルの音の有無。ビビッドレッド・オペレーション2話 演出:益山亮司 原画:野中正幸(?) このシーンを見たとき気絶しそうになった。これは完全にホンモノの音を使ってますね。生々しいまでの質感。留め具をあえて外しているあたりも演出の本気度を…

圧縮の快楽

沓名健一が公開沓名塾で「3コマ以上落として再生してるような動きを脳内で補完する快楽がある」みたいなことを云ってた*1けどその通りだと思う。たまこまーけっと2話アバンのフル2コマタイムライン系作画なんて正直どうでもいいのだ。あんな一部の作画オタ…

Nujabes「Spiritual State」レビュー

Nujabesの「Spiritual State」はマクドナルドと靖国神社の間に位置しているアルバムである。1曲目から放たれる恍惚を誘うトライバルなパーカッションとウェルメイドな美メロピアノという組み合わせはNujabesサウンドの一つの到達点を指し示していると共に一…

スカスカした感じ

今週のマギ13話の野中正幸パートは実に素晴らしく、僕はほとんど反射的に「これはもしかしてファンクではないか?」と思ってしまったほどだ。過度の中抜きによるスカスカ感は初期ファンクのスカスカ感(音の隙間)と通底しており、つんのめるようなタメツ…

アニメにおける最小二乗法的線形回帰⇒超コード化と分子的/微分的振動(=揺らぎ)を巡る原理的考察その1 ダンス論/資本主義批判

2012年12月31日付けのNHKニュースWEBに「ことしの有感地震 3000回超」という記事が載っているのを見つけた。NHKオンライン このデータは図らずも日本人の身体感覚そのものの変容をも象徴しているように思われる。人々は常に「揺れ」を感じている、感じず…

読書感想文

東浩紀の「サイバースペースはなぜそう呼ばれるか」を久方ぶりに読んでみた。以下は躁的な状況の下で書き殴ったメモ群から抜粋した感想のようなものである。 東浩紀は、象徴界の権威が失効したポストモダンを、想像界に満たされた幼児退行的かつアナーキズム…

自殺の様式

自殺においても様々なる意匠がある。といってもそれは首吊りであるとか飛び降りであるとかそのような外面的な様式の選択ではない。そうではなく、内的な、もっと云えば実存的な――その人間のパーソナリティと切っても切り離せない、強いられるものとしての様…

仏界易入、魔界難入

人体欠視症――ふとした拍子に相手の体が透き通るように見えなくなってしまうという奇病に罹った木崎稲子は入院するために訪れた常光寺の境内にある気ちがい病院にて西山老人と出逢う。 たとえば、病院の主のような西山老人は、本堂の畳に紙をひろげて大きい字…

文士と薬物・序説

大正・昭和期の文人の文章を読んでいるとベロナールやらジアール等の普段聞き慣れない薬物名をちょこちょこ見かけるので気のままに引用などしてみながら当時の文壇ドラッグ・カルチャーに一抹の光を当ててみたいと思い至った次第である。 床に横になると、舌…

日本の天皇は実のところユダヤ人でもあり中国人でもあった、という話

ユダヤ資本やフリーメイソンといった語句を駆使する反ユダヤ主義的陰謀論はいつの世にもあるが、日本におけるその根を辿ると意外なことに親ユダヤ思想にも行き着くので戸惑うことになる。しかもこの根は厄介なことに近代日本におけるイデオロギー(右左関係…

ツイッターの糞さと新批評宣言

いやんなっちゃうよもう。いったい何なのさ。 お前がふぁぼったそのツイートの批評文をさ、具体的にどのあたりが良かったとか、1000文字くらいで書いてみろってんだ。どうせ一文字も書けやしない。書けないならふぁぼるな。現代人に根本から欠如している…

アニメーションにおける記号の問題

田中:ある作品で、キャラの鼻の下に必ず2段影がついてるのが気になって、作監の人に聞いたんですけど、「じゃあ、アオリの時は? 影無いと鼻に見えないよ」って言われたりして。俺は「光源が変わったら、(鼻の下に)影がなくたっていいじゃん」って普通に…

焼夷弾の燃えかす

植草甚一の1945年5月23日の日記の引用から始めてみたい。 二十五、六日頃に空襲があるという専らの風評も馬耳東風、ところが一時半から三時半にかけて、大分やって来て、だいぶ焼夷弾を落としたが、僕は往来で約十キ撃墜キを見た、一所懸命で見た、新…

無題

因徹は揺らめく炎を見ていた。ときたま木片が火花とともに爆ぜる音が微かに聞こえる。その音は、まるで何かに生き急いでいるようにも彼には思われた。 天保六年七月某日、赤星因徹は数日後に迫った松平家碁会に臨み某真言宗寺院堂内にて不動護摩供を修してい…

他者、目玉、あるいは幽霊

哲学の書物は、一方では、一種独特な推理小説でなければならず、他方では、サイエンス・フィクション[知の虚構]のたぐいでなければならない (「差異と反復」ドゥルーズ) コルタサルに「占拠された屋敷」と題された奇妙な短編がある。或る兄妹が見えない…

カリフォルニア・イデオロギー、インターネット、天皇

今日び抽象的な「国家」という概念をポジティブに定義付けようなんて思想的試みが流行らないのもグローバリズムが世界を覆い尽くしている現状を鑑みれば当然だ。しかし国家という概念がいくら希薄化しても排外主義が無くなるわけではないしむしろ逆説的なこ…

「ゆるゆり」というセカイ系アニメと「Aチャンネル」という日常系アニメの違いについて

「ゆるゆり」の聖地をネットで調べてて思ったけどこのアニメは聖地が日本各地に分散し過ぎではないだろうか。一応「ゆるゆり」の舞台は富山県の高岡らしいけど、回ごとに背景が千葉県になったり吉祥寺(!)になったりするようだし。この意味で「ゆるゆり」…

自由律俳句

「デパスを割る」「蝉の裏側」「肛門から水がでた」

オタクの帰郷~吾妻ひでおと色川武大~

吾妻ひでおの漫画を読んでいるとわたしはどうしてもそこに色川武大の文章をクロスオーバーさせたくなる。例えば「帰り道」や「地を這う魚」(と続編の「夜の魚」)のようなシュールレアリスム文学的な傾向が強いとされる作品に、 麒麟が部屋の隅に入ってきた…

康生についての覚書

康生は1898年に山東省に生まれた。当時の中国は日清戦争の敗北による挫折感と無力感が支配していた。政治権力を握った西太后は光緒帝による改革運動である戊戌の変法を潰しクーデターを実行。光緒帝を紫禁城に幽閉し、譚嗣同ら6人の官僚を処刑した。さら…