『ダークウェブ・アンダーグラウンド』を出版します & 今年やったこと

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ダークウェブ・アンダーグラウンド 社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち

ダークウェブ・アンダーグラウンド 社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち

イースト・プレスから『ダークウェブ・アンダーグラウンド』という本が出ます。内容についてはアマゾンの商品紹介などを見てください。
念のため、タイトルは某新人バーチャルYouTuberの方とは関係ありません(おそらく)。タイトルもデザインも僕は完全にノータッチで、基本的に本文しか携わってません。ですが、それが結果的にとても良い効果を生んだというか、良い意味で自分の発想からはなかなか出てこないような本に仕上がった気がします。

この本は僕が29歳のときに書き始めて、書き終えたときには30歳になっていた、つまり20代から30代にかけて書いた本で、良くも悪くもこの頃の過渡的な時期にしか書けないものだったと今になって思います。この一年でだいぶ興味関心の分野や範囲がシフトしていったし、そのことは本書にもわりとダイレクトな形で反映されています。

とはいえ、それでも通読したときに、やはり根にあるというか一貫して保たれてるものもあって、それは一言でいえば周縁、中心から外れたものに対する偏愛的な感情なのだと思います。普段暮らしている世界からは見えないもの、あらかじめ排除されてあるもの、そうした不可視の存在たちの営みや軌道を自分なりになるべく誠実に把握してみること。おそらく、そのような自分の基底にある問題意識(?)が本書を形作っているのではないでしょうか。

■2018年にやったことなど

ブログやツイッター等を除けば、だいたい以下のような感じです。順不同。


ユリイカ』の巻末(編集後記とか載ってる部分ですね)の「われ発見せり」という短文のコーナーに寄稿しています。800文字とかなり短い分量なのですが、ピーター・ティールの話からヴェイパーウェイヴの話に無理やり繋げるというかなりの力業をやってます。結果的に書きたいことをすべてブチ込めることができたので満足です。


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早稲田大学現代文学会の同人誌『Mare vol.5 アンチ・タイムライン』に「ピーター・ティール論――封建主義2.0のススメ」という文章を寄稿しています。2万字越えのかなりの力作なのですが、文学フリマでのみ販売された同人誌で現在は入手が困難になっているようです。ですが、いずれ(そう遠くない内に)何らかの形で読めるようにしたいとは思っています。


シックスサマナ 第31号 貧乏への道 全ての道は貧困に通ず

シックスサマナ 第31号 貧乏への道 全ての道は貧困に通ず

シックスサマナ 第32号 人生の後始末

シックスサマナ 第32号 人生の後始末

クーロン黒沢氏が発行するKindle雑誌『シックスサマナ』において「ダークウェブの歩き方」という連載をしています。間違いなく『ダークウェブ・アンダーグラウンド』の原点のひとつ。

それでは来年度も引き続きよろしくお願いします。

人工知能はロシア宇宙主義の夢を見るか? ――新反動主義のもうひとつの潮流

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■新ユーラシア主義、ロシア宇宙主義、シリコンバレー 

 現代ロシア思想の一潮流を形成する極右思想、新ユーラシア主義を代表する哲学者にアレクサンドル・ドゥーギンがいる。ユーラシア主義によれば、ユーラシア大陸の他民族を包み込む受容性=帝国性こそがロシアの本質であるとされ、現にドゥーギンは旧ソ連領(ユーラシア)をロシアの勢力圏とする領土拡大志向の外交戦略を説いている。一方でドゥーギンは右翼であるにも関わらず(?)ポストモダニストを自称しており、1993年には元アングラ詩人であらゆる権威に反抗する作家エドゥアルド・リモーノフと国家ボリシェヴィキ党(NBP)を設立、そのパンクな反権力性によって当時の若者のサブカルチャーにおいて一定の支持を集めていた。

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オルタナ右翼の源流ニック・ランドと新反動主義

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 イギリスの哲学者ニック・ランド(Nick Land)は、2012年、ネット上に「暗黒啓蒙(The Dark Enlightenment)」*1というテキストを発表し、新反動主義(Neoreaction:NRx )の主要人物の一人になった。詳しくは後述するが、この新反動主義のエッセンスがオルタナ右翼の中にも流れ込んでいるとされている。そのもっとも直截な例は、オルタナ右翼系メディア『ブライトバート』(Breitbart)の元会長であり、またドナルド・トランプの元側近でもあるスティーブ・バノンで、彼は「暗黒啓蒙」のファンであったことを公言している*2

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