人工知能はロシア宇宙主義の夢を見るか? ――新反動主義のもうひとつの潮流

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■新ユーラシア主義、ロシア宇宙主義、シリコンバレー 

 現代ロシア思想の一潮流を形成する極右思想、新ユーラシア主義を代表する哲学者にアレクサンドル・ドゥーギンがいる。ユーラシア主義によれば、ユーラシア大陸の他民族を包み込む受容性=帝国性こそがロシアの本質であるとされ、現にドゥーギンは旧ソ連領(ユーラシア)をロシアの勢力圏とする領土拡大志向の外交戦略を説いている。一方でドゥーギンは右翼であるにも関わらず(?)ポストモダニストを自称しており、1993年には元アングラ詩人であらゆる権威に反抗する作家エドゥアルド・リモーノフと国家ボリシェヴィキ党(NBP)を設立、そのパンクな反権力性によって当時の若者のサブカルチャーにおいて一定の支持を集めていた。

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オルタナ右翼の源流ニック・ランドと新反動主義

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 イギリスの哲学者ニック・ランド(Nick Land)は、2012年、ネット上に「暗黒啓蒙(The Dark Enlightenment)」*1というテキストを発表し、新反動主義(Neoreaction:NRx )の主要人物の一人になった。詳しくは後述するが、この新反動主義のエッセンスがオルタナ右翼の中にも流れ込んでいるとされている。そのもっとも直截な例は、オルタナ右翼系メディア『ブライトバート』(Breitbart)の元会長であり、またドナルド・トランプの元側近でもあるスティーブ・バノンで、彼は「暗黒啓蒙」のファンであったことを公言している*2

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海外の『serial experiments lain』コミュニティについて

今年(2018年)は『serial experiments lain』20周年ということで、ファンの有志によるイベント が開かれたり、脚本家の小中千昭氏がブログを開設したりと、各所で『serial experiments lain』を回顧する催しが行われているようです。

そこで、この記事では、そういった盛り上がりとは一見したところ無関係の場所で営まれている『lain』コミュニティを紹介することで、『lain』の受容層の広がりと深さの一端をお伝えしたいと思います。

 

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